診療案内・心房細動

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心房細動

通常われわれの脈は正常洞調律といって平均70回前後で規則正しく打っています。一方心房細動患者さんでは心電図で不規則な心拍とノコギリの歯のような波形を認めます。しばしば心拍数が1分間に130回以上の頻脈をきたし強い動悸や胸部不快感などを引き起こします。すぐに生命に関わる事はありませんが、長期間持続する事により、心房内に血栓が形成され脳梗塞の原因となったり、心臓に負荷がかかって心不全を発症したりします。日常よく見られる不整脈の大部分が治療の必要ないものとされる中でも、心房細動はしっかりとした検査・治療が必要な不整脈です。

正常な心臓と心房細動の心臓

心房細動の症状

  • 頻脈を伴う動悸
  • 息切れ
  • 呼吸困難
  • 全身倦怠感
  • 胸の苦しみ
  • めまい
  • ふらつき

心房細動の種類

心房細動の種類はその持続期間から

  • ①発作性(おおむね24時間以内に自然停止)
  • ②持続性(治療によって洞調律に回復)
  • ③永続性(正常洞調律に回復しない)

と分類されています。
若い方のストレスや飲酒後の①は再発する事はまれですが、中高年以降の心房細動は①⇒②⇒③と進み、約10年間で80%が慢性化するというデータもあります。心房細動の原因として弁膜症や心筋梗塞などの心臓病や甲状腺機能亢進症が挙げられますが、多くは原因のはっきりしない弧発性と呼ばれるもので、加齢や高血圧が大きく影響を与えている事がわかっております。加齢や高血圧で心臓に拡張障害(心臓がかたくなる)がおきると、心房に負荷がかかり心房細動が出やすくなります。心房細動が持続する期間が長引くと、ますます心房細動が停止しにくくなり、一旦停止してもまた発生しやすくなると言われています。

心房細動の治療

心房細動の治療の主目的は洞調律に回復させ維持する事だとかつては考えられていました。しかし、米国のAFFIRM試験やわが国のJ-RHYTHM試験といった大規模臨床試験から副作用の強い抗不整脈剤を用いて洞調律を維持する群(リズムコントロール群)と心拍数のみを調整させた群(レートコントロール群)との間で、治療成績に差が無い事がわかりました。AFFIRM試験では、洞調律が維持できている患者さんに抗凝固療法を中断した事によりかえって脳梗塞が増加したという結果が得られました。この教訓から心房細動治療における最も重要なポイントは、脳梗塞予防のための抗凝固療法であり、リズムコントロールは若年者や症状が強い患者さんに対して行うものとなっています。

抗凝固療法とは血栓を予防するために抗凝固剤と呼ばれる強力な薬剤を内服する治療です。以前は約50年間ワルファリンという薬剤以外になく、その使いにくさから必要な患者さんへの抗凝固療法施行率がなかなか上がらないとも言われていました。ここ3年で通称NOACと呼ばれる、新規の抗凝固剤が3種類登場しました。ワルファリンに比較して、効果は同等で用量調整の手間がいらず、副作用である脳出血の頻度が低く、薬物・食物の相互作用が少ないという利点があります。唯一かつ最大の欠点としては高価な事が挙げられますが、心房細動患者さんの治療に選択肢が増えたという意味では大いに期待される薬剤だと考えています。しかし実は抗凝固療法で肝心なのはどの薬剤を使用するかではなく、どの患者さんに抗凝固療法を行い、どの患者さんに行わないのかを見極める事にあります。

ガイドラインではCHADS2というスコアを用いた点数により抗凝固療法を推奨していますが、実際は適応があっても高齢、独居、認知症などできちんと服薬が行えない患者さんには、一度にあやまって多量の抗凝固剤を不服用する事で出血のリスクが増大し、かえって危険であるためとてもお勧めする事はできません。このように実際は、われわれかかりつけ医が目の前の患者さんの病状、性格、社会的背景などを総合的に判断し、抗凝固療法がはじめてなされるものだと考えています。これが血栓予防と出血という二律背反を併せ持つ抗凝固剤使用の難しい点なのです。

私は病院勤務時代にたくさんの心房細動患者さんを診察させていただいたた経験を生かし、ご本人やご家族と十分にお話した上で、納得していただける心房細動治療を行ってゆきたいと考えています。